2007年2月17日
アニマルワンダーランド -絵本に描かれた動物たち
ブライアン・ワイルドスミスと飛鳥童の絵本の原画を展示している展覧会。おかざき世界子ども美術博物館は東名高速をおりて南の方へ行ったところにある。はじめは名前だけ聞いて岡崎市美術博物館(マインドスケープミュージアム)と同じ敷地にあるのかと勝手に思っていたけど、全く違う。岡崎インターを挟んで正反対の位置関係で、カーナビさまさまである。場所は違うけれども、岡崎市美術博物館とおなじく緑の多い公園の中に建てられていて、環境づくりがしっかり考えられている感じがする。親子造形センターという施設も一緒になっていて、THINK(考える)、SEE(見る)、DO(作る)をキーワードに子供たちが積極的に関われるように設計されている。もっとこういう施設があればいいのになぁと思う。略称なのか「おー!」と描かれたロゴデザイン(ロゴは「おー!」の上のコインのフロッタージュみたいな方なのかな?)も目を引いてかわいい。
展示室の入口に小さなカウンターがあり、そこでチケットを買って入場。アプローチには動物のシルエットクイズ。それを抜けるとシルエットクイズの答えのワイルドスミスの絵が並んでいる。なるほど、犬はこうなっていたのか、などと感心する。大きな展示室の中央には塗り絵のプレイルームのようなコーナーがあり、ちびっ子たちと親たちが遊んでいる。ここの係の人は大変だなぁ。展示壁にはワイルドスミスの絵本、「どうぶつ」「うさぎとかめ」「くまごろうのだいぼうけん」などの原画が並び、譜面台には絵本がある。譜面台の絵本の他のページが気になってページを繰っていたけどもしかしてあれはダメだったのかな(と後で思った)?
原画は不透明水彩で大胆に描かれていてかなり荒々しい画肌。かなり修正の跡も多くて、剥落もある(修復されることはないのかな)。印刷を前提にした絵本の原画はこんなものなのか・・・しかし、だからこそ手荒く修正された箇所から作者の試行錯誤が伺い知れて興味深い。生き生きとした筆致が見えるうえに、指紋までぺったりとついていたりして、作者の「手」が感じられるのも原画の魅力かもしれない。手塚漫画の原画原稿の展示を見た時と同じような感動があった。
ワイルドスミスの描く動物はトレードマークの色彩もさることながら、動物の生物学的な特徴を決してないがしろにせず表情豊かに表現しているところが魅力だ。これは手塚治虫に通じる魅力かもしれない。自然への愛情のような親しみが画面全体からにじみだしてる感じも手塚的かも。絵には擬人化しつつも、しすぎていないリアル感があって、そのうえ一瞬の動きの描写が的確。子供向けの絵本だからこそ大事にすべき洞察の聞いた観察眼がある。「そうそう、うさぎってこうなんだよねぇ」と一緒に行った妻と頷きながら見た作品ばかり。かといって描写だけではなく、当然ながら話や構図の構成もよく練られているのがよくわかり、感心するばかり。
ワイルドスミス作品にたいして数は少なめだが、別室で飛鳥童の絵本原画も展示されている。「まだかな まだかな しろくまこぐまのまちぼうけ」というホッキョクグマの絵本。こちらはワイルドスミスの原画の粗さとは正反対の丁寧さで、原画としての展示も意識されているよう。キャンバスにアクリルで描かれている。氷上のホッキョクグマ親子を定点観測のようにして横長の画面に描いている。この人の他の作品を知らないのでなんとも言えないが、この作品については静かな印象が強い。ワイルドスミスとは全く違ったアプローチながら北極の広い氷やオーロラの光など自然に対する愛情が表現されている。しかし、この展覧会ではワイルドスミスのインパクトが強すぎて飛鳥童の印象が薄くなってしまった。
この展覧会を見終えてショップでワイルドスミスの絵本を1冊購入。展示されていた「くまごろう」は売り切れ。それにしても子供対象とはいえ、まるで雑貨屋のようなミュージアムショップにはいささか驚いた。うーん、大人の視点でみちゃいかんのかな。でも買うのは子供じゃなくて親だよなぁ。
親子造形センターという名のウィングにはいろいろ体験できる施設がそろっていて親子連れで大変にぎわっていた。そんななかで目に留まったのはEBアートというコーナー。石膏板に絵を描いてそれを電子線で定着させるらしい。絵は凹凸ができなければ何でもいいらしく、鉛筆やサインペン、水彩絵の具が用意してある。土台になる色んな石膏板(板状ではないものもある)を購入して(安いヨ)描いてから仕上げてもらう仕組み。ちびっ子たちに混じって2つほど作ったが、その出来の良さにはビックリした(この日に作ったものの詳細は一日一画で)。こういう場所が身近にあるといいなぁとつくづく思った。子供が居たら間違いなくつれてくるだろうなぁ(親が夢中になるけど)。
さて、帰ってからワイルドスミスの経歴について調べてみたら、ちょっと驚いた。はじめは化学の道に進もうとしていたらしい。ところが中退して美術学校へ行く。兵役を経てなぜか音楽の学校で数学教師をやっている。その後結婚してしばらくして、奥さんにやりたいことをやってはどうかと言われたのをきっかけに教師を辞めて画家になる。直後に奥さんから妊娠の事実を聞かされ絵本作家に・・・ということらしい。彼の経歴を知って、サイエンス、美術、子供向けのなにか・・・と、否応無しに自分の状況に照らし合わせてしまい複雑な気持ちになった。やはり本当にやりたい事をやらなければ人生台無しになるかもしれない。一瞬、こんな経歴がありえる英国がうらやましくなったが、日本でも不可能な事ではない。本人がどうであるか次第なのは言うまでもない事だ。それにしても、教師の仕事を辞めて絵描きになってすぐに妊娠を打ち明ける奥さんもスゴいなぁ。この話を聞いて彼の作品の魅力がさらに増したような気がする。伊豆高原のワイルドスミス美術館にもそのうち行ってみたい。