2007年2月12日

祝画三昧

名古屋は池下駅近くにある古川美術館の企画展。家から散歩がてら歩いて見に行った。平和公園から自由が丘、覚王山日泰寺を経て新旧の住宅街を縫うようにして歩く道は実に楽しくて、この規模の美術館はちょっとした休憩にはぴったりだった。ちなみにこの後に寄った為三郎記念館でのお抹茶もとてもよかった。古川美術館入館時にお茶の割引券がもらえるのも嬉しい。今回のお茶菓子はちかくの梅屋さんのもので、これまた大当たり。

さて、展覧会は年始らしくおめでたい絵をテーマごとに集めたもの。テーマは「願う」「吉祥の装い」「めでたきもの」「祝画」「四季を祝う」「生命讃歌」。どうめでたいのかの解説付きで、その解説も勉強になって結構面白い。以下、気になったものをピックアップ。

川端龍子「長春花」
実は龍子の作品ってあまり観たことがなかった。大胆な筆運びと安定した構図に貫禄がある。花の赤と下の器のどっしりした赤の配置が心地よい。

六谷春樹「一富士二鷹三茄子」
切り絵? 初夢に見るとめでたい三つをきれいに配置した作品。これをデザインしたグッズもうられていて、たしかにこりゃめでたくていいなぁと思った(けど買わなかった)。

川合玉堂「松竹梅」
地味ながら最も印象に残った作品。川合玉堂にしては軽い筆さばきで気楽に描いたような感じがする。松の幹を画面の中央左寄りにデーンと置いてその背後の上半分に竹、全面の下半分に梅を自然に配置してそれぞれが存在感をもっている。解説によると、常緑樹の松は安定不変の常磐木として、生長の速い竹は子孫繁栄の象徴として、いち早く花をつける梅は春の魁としてそれぞれ縁起の良いモチーフとのこと。中国では歳寒三友といってこれらを尊ぶという。歳寒は困難な時こそ物事の本質が見えること、三友は正直・誠心・博学な友、ということで厳しい中でも有益になるものの例えなのだとか。

前田青邨「祝ひ日」
画面中央に非常に大きく描かれた下弦の半月と、左下に小さく描かれた月を愛でる舞人・楽人たち。まるで映画E.T.の有名シーンみたいなバランスに、驚かされるとともに奇抜な画面構成に感心したが、はて、月見にしては半月はおかしい、なんだろう? とわからなくなった。これまた解説によると、「祝う」は「斎う」で、神の力を借りて大切なものを守る、身を清めて神や祖先の霊を祀り、自分たちの生活の無事とこれからおこる物事の安泰を期すことだという。月を描いて「祝ひ日」とはどういうことかと思ったが、日が昇る前に現在・未来を「斎う」ということなのかな。画面として秀逸で、さらには一見してはわからない敬虔な意図がこめられている作品は結構好きだ。

川端玉章「端午節句」
幟のほかに鯉のぼりがのたうっている。背後に富士。幟のひとつに描かれている鐘馗は玄宗皇帝の故事に基いた疫鬼を追い払う神とのこと。菖蒲は尚武、勝負に通じるということでなるほど男の子の節句なのだとか。よく見ると荒々しくのたうつ鯉のぼりは背景の富士山よりも高い位置に描かれていて、よく考えられた絵だなぁと感心。祝画のめでたさはこうした土着信仰みたいなものがあるから成り立つんだろうし、いい作品は画題にあらわれる文化的な差異よりも深いレベルで普遍的に人間が持つセンスに響くところがあるのだろうと思う。そういえば、ずっと前に鯉のぼりの絵を描こうと山間部の鯉のぼりを取材したことがあった。結局まとまらなくて放置しているのだけど、これをヒントにひっぱりだしてもいいかなぁ・・・。

文責: 桂田祐介 2007年2月16日