2005年10月8日
大アンコール・ワット展
松坂屋美術館で開催されていたカンボジアのアンコール・ワット遺跡にまつわる特別展。プノンペン国立博物館所蔵のクメール王朝の美術品が多く展示されている。展覧会名に反して意外にもアンコール・ワット寺院そのものについての展示がなかった(模型とか、建築的な側面も期待していた)ので、ちょっと拍子抜けの感もあったのだけど、驚くほど保存状態の良い彫刻と和辻哲郎的な風土観を感じさせる展示の構成がよかった。以下、BBSでの感想を抜粋。
2774. 大アンコールワット展。 桂田 2005/10/09 (日) 02:01
[略]
10/8に松坂屋美術館にて開催中の「大アンコール・ワット展」を観てきました。思ったより賑わっていて人気の高さが伺い知れました。で、内容はカンボジア奥地のアンコールの遺跡群を中心にした彫刻がメインの展示でしたが、私が今までよく知らなかったこともあってなかなか驚かされました。クメールの歴史を追っての展示だったのですが、大乗仏教、小乗仏教、ヒンドゥー教が渾然一体となったような宗教観でその王朝によって仏教色が強くなったりヒンドゥー色が強くなったりするのは新鮮でした。他文化に対するこの柔軟さ、土地を基本にして発展する農耕社会ならではの柔軟さなのかなぁなどと思いました。クメールの彫刻を観ていると日本の寺院にある色んな仏像や如来像を連想して、ああこれがアジア人の感覚なのかも・・・なんて考えてしまいます。不毛な砂漠で出来た一神教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)の極端な価値観は水すらない遊牧民が生きてゆく為の思想で、一方アジアの多神教や精霊信仰は肥沃な湿潤地帯で定住生活する農耕民の価値観は極端な対立よりも周囲をある程度とりいれて土地を守る為の思想なんでしょうね。そう考えると、今の日本人もとてもアジア的な宗教観の中で生きているんだなぁとしみじみ思いました。
宗教観はさておき、気になったのは彫刻の文化的背景もですがなにより保存状態の良さでした。密林の奥で500年も忘れられていて、植物や風雨のストレスもあり、先の内線で荒れ放題の印象があったのですが、そのキレイなこと! 彫刻はほぼ全てが砂岩でできていたのですが、1000年以上も前とは思えない美しさでした。日本のお地蔵さんなんかもたいてい砂岩ですがかなり浸食されてますから、これはもしかして寺院の構造によるものなのか、あるいは日本のような変動帯とは違う安定した続成作用の賜物なのかと気になりました。その点では寺院の構造に関する展示や出土品の詳しい場所や地質条件に関する説明がなかったのが残念です。モノとしても当時のクメール人の彫塑技術の高さが伺い知れるものばかりで、その造形だけでなく上述の宗教観とか保存状態の良さの背景に思いを巡らせながら通して観るとかなり楽しめる展覧会でした。
文責: 桂田祐介 2005年12月21日