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![]() トム・ウェイツって一体だれ? なんて言ってるアナタ、人生損してますよ! まぁ、1973年のデビューから数えてもう30年あまりになるベテランだけど目立ったヒットもないから、知らない人が多いのにも納得できますけどね。しかし、もしこのページを見たあなたがトム・ウェイツの世界を知らないのなら・・・ここへ来たからにはもう「トム・ウェイツってだれ?」なんて言わせませんよ。 舞台は場末のジャズバー、時刻は日付けが変わってしばらく。よれよれの格好で呑んだくれてはピアノに向かって繊細なメロディを奏で、人生を知り尽くしたかのような詩を呟き始める。 彼の70年代に残した音楽を聴けば、そんなイメージが浮かぶ筈です。「ルイ・アームストロングとエセル・マーマンによる地獄のランデブー」と本人が形容するその嗄れ声と独特の節回しはかなり癖があるけど、一度聴くと忘れられない渋さと味わい深さがあります。1950年代〜60年代のビートニクスから遅れること約20年。ジャック・ケルアック、チャールズ・ブコウスキーに代表される酒、女、ジャズに身を任せ夢を求めてストリートを放浪するビート・ジェネレーションそのままの姿で、トム・ウェイツは都会の裏側にくすぶる人々のさまざまな人生をみごとに描き出しています。そんな人間ドラマに折り込まれた彼の詩才にも注目。綴れ羽織りのごとく巧みに重ねあわされた言葉は美しい韻を踏みながらあらゆる人を突き放したり光を当てたり。 そんなトム・ウェイツは役者としても異彩を放つ名優で、脇役として出演しても主役を食ってしまう画面泥棒。やっぱりこの人間観察眼が名優たりえる所以でしょうね。 しかしいつまでもビートニクという懐古趣味にとどまらないところが彼のフトコロの深さ。80年代以降は役者としての経験も手伝ってありとあらゆる音楽を取り込むことで表現の幅を広げました。ある時は吟遊詩人、バラードシンガー、偽善者・・・と手を変え品を変え、今まで以上に複雑な人間模様を描き出すことに成功したウェイツは、繊細さと骨太さを兼ね備えた人間臭い音楽に磨きをかけてよりリアルな世界を浮き彫りにしています。詩世界のみらず、そのサウンドは独自の楽器をデザインしてアバンギャルド世界を探求し続けたハリー・パーチや無国籍で実験的な音世界を実現したキャプテン・ビーフハートにも全く引けを取らない自由で独自のものへと進化を遂げています。そして雑多な無国籍音楽を見事に我がものにしたウェイツは21世紀にかけて新たな次元へと旅立ちます。今まで培って来た多彩なアンサンブルと彼の詩世界を咀嚼してさらに磨きをかけ、さらに叙情的に深みを増して行く。ウェイツワールドに終わりはありません。トム・ウェイツは常に変貌し続けているのです。 百聞は一見に如かずとは言うけれど、この場合はいくら説明を並べても聴かないことにはウェイツワールドが実感できないはず。まあ、まずはどっからでもいいからトム・ウェイツを聴いてみて、その嗄れ声の中になにか気になるものが見つかったなら・・・・もうそこには二度と抜けられない雑多で重層的なウェイツワールドが広がるのみ。くれぐれも溺れない程度に酔いどれてこの美しき慢性疾患を楽しんでくださいな。 |
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参考文献: 「トム・ウェイツ」酔いどれ天使の唄 パトリック・ハンフリーズ著 室矢憲治訳 大栄出版 1992年 Mr. トム・ウェイツ 城山隆編 東京書籍 1998年 ↑この二冊の本、是非とも読むべし。 |
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