2005年11月23日

トマト(その3)

時刻: 23:42 | 技法: 鉛筆

昨日「触覚で描く」なんて書きましたけど、自分でそこんところが気になっていまして、今日は触覚を意識してみました。といいますのは、別に実際に触りながら確認したとかではなくて、対象の材質やそのものの存在感を表現することを目的に描く、つまり明暗による空間表現よりも物の形状の表現に留意して描くということです。例えば解剖学や生物の分類学での記載に用いられる点描、北方ルネサンスの銅版画などは触覚的な描画の最たるものかもしれません。
前置きが長くなりましたが、これはとりあえず冷蔵庫にあったトマトを題材に「触覚」を意識して描いてみたものです。比較のためにライティングをセットしてもう一枚、明暗による空間表現に主眼を置いて描いてみました。

いわゆるWeb拍手です。→

ちょっと角度は変わってしまいましたが、同じトマトです。強い横からの照明を当ててみました。空間が画面内に意識されるので触覚というよりは目に映る視覚に特化した感じでしょうか。
同じものでも意識の仕方、見方で表現するものが変わってくる・・・という点では、絵から描き手の意識を感じることができるとも言えそうです。ちょっと飛躍しますが、西洋絵画の歴史ではルネサンスとバロックとで事物に対する視点、ひいては世界観が大きく違うことを知る手かがりとも言えるでしょうか。もっと巨視的に見ると日本画と西洋画の間にはまさにこの違いがあるようにも思います。
実際はこの両方の視点をブレンドして知覚しているわけですが、こうして意識の重心を変えながら見てみるとよりトマトというものの神髄に迫ることが出来たような気がしてしまいます。

いただいたご感想とそのお返事など

桂田さん、とてもよくわかりました!
まず、触覚的とおっしゃる上のトマトの質感表現に唸りましたが、下の光と影によるトマトは本当に空間を意識させてくれますね。デューラー的な表現とCARAVAGGIO的表現と意訳して良いでしょうか?下のトマトなどCARAVAGGIO派作品の登場人物のように見えます(^^ゞ
2枚のトマトから描き手の意識による表現の違い、世界観の違いをこんなにすっきりと理解できるなんて...嬉しいです〜。ありがとうございます!桂田さんて凄い!!

CARAVAGGIOの視覚表現による作品の数々は、当時の画家たちに大きなショックを与えたのだろうなぁと、しみじみ思ってしまいましたです。

投稿者 : June | 2005年11月25日 00:01


Juneさん、
いやぁ、意図したところが伝わったようでよかったです〜。実は、ちょっと複雑なことを書き過ぎたかなぁとちらっと反省したりもしていました。私の文才では言いたいことの半分も言えなかったというのもありますし・・・。
絵をよく観察しますと、ある対象を平面上に絵として再現するアプローチの仕方が様々なことに気づきますが、それは描き手の意識の仕方、世界観なんでしょうね。時代によっても画家それぞれによっても違うのが面白いところです。よく先人の作品を模写するととても勉強になると言いますが、それもこういうことなのかなぁと私なりに考えてみました。

で、デューラーはもちろんルネサンス期の絵画はこの「触覚」的な要素が強いですよね。マニエリスムあたりは明暗も強くなって絵画としての空間に対する意識が強まってきますが、なんといってもカラヴァッジョ以降のバロックの多くの劇的な空間表現は「視覚」重視の好例だと思います。おっしゃるとおり、カラヴァッジョの出現は当時まさにパラダイムシフトだったことでしょうね。

投稿者 : 桂田 | 2005年11月25日 01:34


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